アヴァベル~女神に召喚されたら英雄だった件~


お気に入りの英雄を集め、無敵の英雄チームを編成しよう!
新たな英雄をスカウトすれば、新たな可能性が生まれる!
さらにダンジョンに挑んで武器や財宝をゲット!

スキルや装備は組み合わせ無限大!
オートモードで操作もラクラク!
迫力のグラフィックとド派手なエフェクトで興奮が止まらない!

めくるめく冒険をさらなる成長につなげよう!



動けない。
全く、ほんの数ミリも、指先さえ動かない。

かろうじて動く目をきょろきょろと動かして、周囲を確認する。
何もない。ただただ、白い。

一応、足元も見てみたんだけど。
床、なのか、これって。こんなミルク色の材質、存在するのか。でもこれが床じゃないとしたら、俺って何に立ってるんだろう?
そういえば、身体は完全に動かないのに、どうやってここに移動したんだ。
そもそもここに来る前は何をしていたんだったか。

……落ち着こう。ちょっと状況を整理しよう。
これくらいで焦っていては冒険者としては三流だ。
いや、俺は一流って胸を張れるほどじゃないと自覚してるけど、三流ではない。と思いたい。うん。

まず名前だ。俺の名前はジーク。
世界の多くの冒険者がアヴァベルと呼ばれる塔の踏破を目指すんだけど、その拠点であるリヴェール、の近くにある、これといった名物や名産品もない村の出身。どこにでもいる普通の冒険者で、剣術を得意とする剣士……ウォリアーだ。
アヴァベルの端っこの村で、近所に住む元冒険者だっていう人に剣を教わって、村では負け知らず、くらいまでは強くなった。

で、俺は冒険者になるって決めて、アヴァベルに向かったんだ。
アヴァベル。いつからあるか分からず、どれくらいの高さまで伸びているのかも謎の塔。
その塔を踏破するとどんな荒唐無稽な願い事でも叶うとか、世界最強の力を手に入れるとか、三回生まれ変わっても遊んで暮らせるほどの財宝が手に入るとか、色んな噂がある。
そこに、世界中から冒険者が集まっていた。自分に合う武器や道具を手に取って、上へ上へと目指し、自分のパーティを組んで、どこまで続くか分からない階層を突破していく。
塔の中でありながら、森や草原、砂漠、街と階層ごとに環境が変わる塔は冒険者達の好奇心を刺激して止まず、殆ど一生を塔の中で過ごす冒険者も少なくない。
俺だって、初めて塔を目の前で見たとき、自分も冒険者の一員になるんだって、絶対に塔を制覇するんだって、胸には希望が満ちていた。

……それも、長くは続かなかった。